【元考古学専門修士卒が教える考古学新刊紹介】 根岸洋著『縄文と世界遺産-人類史における普遍的価値を問う』 - 大学生の下剋上勉強法

【元考古学専門修士卒が教える考古学新刊紹介】 根岸洋著『縄文と世界遺産-人類史における普遍的価値を問う』

北海道・北東北の縄文遺跡群

はじめに

みなさんこんにちは、たいやきです。

今回は、考古学の新刊として、根岸洋氏の『縄文と世界遺産』についてご紹介していきたいと思います。

根岸氏は東京大学で活躍されている考古学の専門家。

東北北部の縄文・弥生時代を対象とした研究を進められ、近年ではこちらの本を最近だされました。

また、根岸氏はかつては「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録委員会としても活動されていました。

そんな、考古学の当事者、専門家としての立場から書かれた本です。

昨年の夏に世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」。

現在でも話題となっており、実際に遺跡を訪れた、または今後訪れる予定や機会がある方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

本書では、「北海道・北東北の縄文遺跡群」ついて、日本における考古学史の検討や世界の遺跡(世界遺産)との比較を通して、その価値に関する検討を試みています。

大変刺激的な1冊ですので、興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

『縄文と世界遺産』について

まずは、目次についてみていきましょう。

はじめに

第1章 縄文を問い直す

第2章 先史遺跡と世界遺産

第3章 世界の先史時代との比較

第4章 縄文遺跡群と「縄文文化」

あとがき

このようになっております。

本書でのテーマは、縄文遺跡群の「人類史における普遍的価値」を問うというところにあります。

世界遺産に登録されるためには、その対象が人類史において何か顕著な価値が認められないといけません。

実は、この点をクリアすることができず、縄文遺跡群は長い間、登録に苦しんできました。

縄文時代というのは、今から約16000年前から約2300年前まで続いた時代。

石を打ち割った利器を用いて遊動生活を営んでいた旧石器時代と、稲作農耕を主要な生業とした弥生時代の間の時代です。

縄文時代は、狩猟・漁撈・採集・栽培による多角的な動植物資源を利用しながら、土器を製作し、定住生活を営んでいた時代です。

実は、これが、世界に類を見ない特徴なのです。

海外では、基本的に旧石器時代の後は、新石器革命といって土器を製作し、定住生活を営みながら農耕・牧畜を生業とするようになりました。

しかし、日本では農耕をおこなうのは弥生時代に入ってから、牧畜は古墳時代に入ってから。

すなわち、土器を製作し、定住生活を営むものの、その生業面で外国とは大きくことなっている独自の文化なんですね。

こういった点から、縄文遺跡が普遍的価値を有していると指摘することができます。

しかし、大きな問題は、

「なぜ、北海道・北東北に、しかも特定の遺跡に限定されるのか」

という点だったんですね。

縄文時代は日本列島全体の規模で展開していました。

列島の各地で縄文遺跡はみられる、存在しているわけです。

著名な青森県三内丸山遺跡以外にも、大変重要な遺跡はたくさんあります。

そのなかで、なぜこの地域だけが世界遺産の対象なのか?

この点になかなか答えることができなかったんですね。

本書では、時空間的に様々な比較を通して縄文遺跡群の位置づけを試みています。

その結果、著者の根岸氏は、縄文文化を一括りの単位として扱うことが困難である点、そして縄文文化を一括りに扱うことが、ユネスコが重要視する文化多様性に合わない可能性を指摘しています。

確かに、縄文文化といっても、様々な時間的な、空間的な文化圏があります。

北東北以北の地域例にとってみても、縄文時代前期から中期(今から約7000~4500年前)では円筒土器文化、晩期(今から約3200~2300年前)では亀ヶ岡文化という文化が栄え、その範囲も変動しています。

なお、円筒土器文化についてはこちらの記事亀ヶ岡文化に関してはこちらの記事をご覧ください。

これらをふまえて、なぜ「北海道・北東北の縄文遺跡群」が登録されたのか?

それは、これらの遺跡群がそれまで登録されてきた世界遺産とは異なった特殊性を持っていたから、とします。

そこには政治的、現代社会的な背景もありますので、大変難しいのですが、結論としては、やはり、確かに人類史的にみて顕著な価値を有してはいるものの、これらの遺跡群が縄文文化を代表する遺跡として扱えるかは難しい、ということになるでしょう。

各地域でそれぞれ興味深い縄文遺跡が存在し、地域文化圏がみられます。

縄文時代という枠組みのなかで、おおまかな共通性や類似性はみられるものの、やはり各地域で独特なのです。

しかし、「北海道・北東北の縄文遺跡群」には大きな価値があり、世界文化遺産になったのも事実。

重要なのは、今後、縄文文化の捉え方や地域文化圏の扱い方、そしてこの遺跡群の価値についてさらに、より深く考えていくことでしょう。

世界文化遺産登録のシステムやその背景についても、大変考えさせられます。

おわりに

みなさん、いかがでしたか?

学問的な観点から「北海道・北東北の縄文遺跡群」について検討を試みている本書。

遺跡群の人類史における価値について考えてみるにはもってこいの1冊です。

興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

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