【元考古学専門修士卒が教える】墓石の考古学的研究における観点とその方法 - 大学生の下剋上勉強法

【元考古学専門修士卒が教える】墓石の考古学的研究における観点とその方法

中近世考古学

(※この記事でわかること)
この記事では、墓石の考古学的研究における観点とその方法について、簡単にまとめています。

はじめに

みなさんこんにちは、たいやきです。

みなさんは、実はお墓がとても重要な歴史資料であると、ご存じでしたか?

お墓は、信仰の対象でありながら、過去の社会を反映しているという性格を持っているのです。

今回は、そんなお墓の歴史資料としての研究面に着目し、その観点と方法についてまとめています。

なお、今回は、「墓石が語る江戸時代」を参考に、この記事をまとめています。

墓石の歴史資料としての重要性や魅力がわかりやすくまとめられています。

みなさんも、ぜひ読んでみてください。

石造物(墓石)の性格

次ぎに、石造物が持っている性格について、紙資料と比較しながらみていきましょう。

古文書が紙に書かれた歴史とするならば、石造物は石に刻まれた歴史とすることができます。

古文書は、記録することが容易、文字量・情報量が多い、という性格を有しています。

これに対し、

石造物は、記録することが困難、文字量・情報量が少ない、という性格を持っています。

このような相違点がみられるのですね。

また、この差異に加えて、石造物は不特定多数の人々にみられるものであるという点を考慮すると、墓石に刻まれた情報というのは古文書に比べて信憑性が高いうえ、後世に残そうとする当時の人々意志が感じられます。

この点から、石造物に刻まれた歴史には、紙に記録されなかった、当時の重要な情報が含まれている可能性があるといえるでしょう。

墓石の持つ情報性

墓石の調査からは、主に、

①墓石に刻まれた文字(文字情報)と、

②その大きさ・形・装飾・石材(非文字情報)

といった2種類の情報を読み取ることができます。

まず、①の墓石に刻まれた文字について触れると、代表的なものとしては戒名・死亡年月日を挙げることができます。

なお、戒名には、その人物に関する複数の情報が表れています。

その例としては、おおよその年齢(大人/子供)や性別、宗派、生前における社会・経済的階層、死因などがあるんですね。

死亡年月日に関しては、同じ時期に多くの人が死亡している場合、それは歴史災害が起きた事実などを示している可能性があります。

しかし、墓石に刻まれるのは主に戒名であり、俗名(生前における名前)ではないといった点に注意する必要があります。

この点に関して、大きな助けとなるのが寺院に残されている過去帳です。

過去帳には死者の名簿として戒名以外にも俗名や続柄などが記されています。

そのため、過去帳を用いることで、戒名のみでは明らかにすることができない、「その墓が一体誰の墓か?」といった点を明らかにすることが可能となります。

なお、この過去帳は大きく、①寺院過去帳と②軒別過去帳といった2種類に分類することが可能です。

前者は、寺が壇家の供養を目的として管理上作成したものであり、さらにa:死亡順で記録する年次書き継ぎ式と、b:死亡した月別・日別で記録する繰り出し式の2種類に分けることができます。

そのような寺院過去帳に対して、後者である軒別過去帳は各家々で先祖を書き連ねるものです。

墓石研究の観点

また、墓石の考古学的研究を行う際には、以下の観点に着目し、分析を行うことができます。

①型式学的分析:形・大きさなどの属性間における相関関係

②身分・階層の分析:上部(墓石)/下部(埋葬施設・埋葬品)

③石材流通に関する分析:墓石の型式と石材の種類との相関性や、製作地と石材の関係性

このように、墓石の研究はその調査を通して多様な分析を行うことができ、当時の社会復元に大きく貢献することが可能です。

墓石の調査項目

では、墓石からは、具体的にどのような情報を得ることができるのかといった点についてみてみましょう。

まず、文字情報に関しては主に墓石に刻まれた文字を通して得ることができますが、例としては、

a:死者に関する情報

b:施主に関する情報

c:供養のための文言

などの点に関する情報を得ることができます。

特に、aに関しては戒名または俗名を通して、bに関しては記されている俗名を通して知ることができます。

しかし、その記されている俗名が死者であるのか施主であるのかが不明である場合、先述したような過去帳からの検討が必要となります。

また、墓石そのものの情報は、以下の点に着目することで得ることができます。

a:法量…ex)高さ(棹石のみの高さや、台石を含めた全高など)、幅、厚さ

b:型式…ex)櫛形や箱形、不定形など

c:石材…ex)花崗岩や日引石、笏谷石など

d:装飾…ex)額縁や蓮華、家紋、梵字など、文字以外に刻まれる情報

このように、墓石の調査に関しては、特に上記の点に着目することで多様な情報を得ることが可能となります。

墓石研究の利点

上記で述べているように、墓石に刻まれた歴史の研究は重要な役割を担っています。

この点に関して、墓石を研究する際には複数の利点がみられ、以下の点を指摘することができます。

①原位置性:重量があり、移動することがないため、原位置性を保っている。

②属性の多様性:大きさ、形態、材質などの複数の要素から、特に製作・流通に関する考古学的研究など、多角的な研究を展開することができる。

③紀年銘:年号が刻まれているため、当初から絶対年代を用いて資料を扱うことができる。

④普遍性:墓石文化は近世国家全体(主に本州、四国、九州)において普及したため、全国各地における比較研究が可能となる。

⑤不朽性:風雨などによって老朽することはあるが、紙に比べると耐久性が高いといえる。

⑥調査の容易性:古文書のくずし字読解のような高度な技術を必要とせず、学生などでも比較的簡単に調査を行うことができる。

 このように、江戸時代の墓石研究は近世史研究に大きな役割を果たすうえ、その研究には複数の利点がみられる、というのは大変重要であるといえるでしょう。

おわりに

みなさん、いかがでしたか?

実は、墓石に関する考古学的研究では、主に型式学的分析や身分・階層の分析、または石材流通に関する分析などの様々な点から研究を行うことができ、そのような多様な分析を通して、当時の社会復元を行うことが可能なんですね。

また、墓石の調査からは、主に墓石に刻まれた文字(文字情報)を通して人物そのものの情報を、加えて大きさ・形・装飾・石材といった非文字情報を通して墓石そのものの情報を得ることができ、このような点から、墓石が持つ情報性は非常に豊富であるといえます。

お墓は、祖先を敬う、大切なものです。

しかし、それに加えて、お墓は重要な歴史資料でもあるのですね。

この墓石文化を、ぜひとも大切にしていきたいものです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました